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 (薄い耳だなぁー 血は出るかな? よーし切ってみよう)好奇心を押さえられなくなったぼくは
クロの耳に和バサミを当て、力を込めた。フウォンとすごい声をだして猫は空中に飛んだ。
ニャンとは云わなかった。猫もびっくりしたと思うがぼくもびっくりした。血をあたりにまき散らしながら
クロは駆け廻った。騒ぎを 聞きつけた母はその状態を見て唖然としたらしい。6才の頃のことである。
後に母は云った。それ以降クロは猫よ蝶よと大切に育てられたそうな。クロが化け猫になって、
敏之に祟りがあったらいけないと思ったという。母親とは本当にありがたいものだ。
入江たか子のような化け猫が行灯の油なめなめフギャーとせまってきたら、
オレおしっこもらしちゃうもんなぁ。(ここで笑えた人は50才以上の方だと思います。)

  お蔭で祟りはその後なかったのだが、クロの因果かこの数年でやたらに身辺に
猫が増えてきたのである。家に5匹、外に2匹。朝起きて視界に猫が入らない時がない。
ニャンでかとネコんで考えたら(ダブルで笑ってください)理由がわかった。

 子供が生意気になってきたからだ。

 かーさまの口ぐせはこうだ。(家では昔話風に互いにかーさま・とーさまと呼んでいる。
そうなれば後にじーさま・ばーさまにスムーズに移行できる)曰く、猫が一番かわいい。
これを一日数回いう。そんな時は決まって子供が生意気な口や態度をとった時である。
うちのかーさまは反省しない女として有名である。結婚後一度もぼくにあやまったことがない。
25年経つがここまで徹底すると見事である。拍手パチパチパチ。そんなかーさまも子供には
手を焼いている。ぼくは足を焼いている。遅れましたが子供は4人です。
えーと、社会人男女と大一女、高三男です。まぁよくがんばったもんです。ハイ。話を戻します。

 確かに昔はよかった。子供達も皆かわいかった。アフリカ出張から帰ると
パパァと皆一斉に飛びついてきた。1人1人抱き上げ、木彫りの猿やカバをあげる。
するとワーイ動物園だとハシャグ。妻は目を細めてそれを眺める。そこには家庭というものがあった。
ジィス イズ マイホーム。これがあった。所が今はどうだ。

 出張から帰ると出てくるのは犬と猫ばかりだ。子供達はいないか、居ても部屋から出てこない。
ドアのすき間からは訳の分からない音が聞こえてくる。ノイズというらしい。
唯ジーとかズーとか云っている。雑音である。暗い。ポールアンカとかプレスリーみたいに
わかりやすい曲を聞いてもらいたい。顔を見ても 「パパァ」という歓喜に満ちたものではない。
「なんだおやじか……」という落胆いや絶望に近い表情だ。「カチカチ、親不孝は火事のもと」
「親孝行してハワイに行こう」、この言葉を子供に贈りたい。

 まぁ足を焼いているぼくがこういうのだから、かーさまも相当ダメージを受けているらしい。
曰く「折角、腕によりをかけて料理を作っても帰ってこない」「ああ云えばこうと上祐みたい」
「友達と長電話している時は明るいのに、わたしと話をする時はブスッとしている」など、など、など。

 そしていつの頃からか、子供ストレスを解消するためにアル中、不倫、パチンコに走れなかった妻は、
夜な夜なノラ猫にえさをあげに外出するという「アブナイ猫女」になったのでございます。
  この類の猫女、猫ババア系の人達は結構いるらしく、そこには縄張りもあり、
誰々は〇〇公園でかつおぶし系、誰々は〇〇神社で生魚系のエサと決まっているらしい。
それを無視してうろつくとヒッカカレルそうだ。

 そして、〇〇の猫は子供を五匹生んだとか。〇〇の猫と〇〇の猫はあやしい。できているに違いない
とか。情報の交換もしているようである。そのうち、猫を求めて徘徊する妻に子供達は危機感を
抱いたらしく、次々に子猫を拾ってきて、まぁ猫屋敷になってしまったという訳である。

 最初のころは、毛だらけになり嫌だったが
此の頃は妻と一緒にやっぱり「猫が一番かわいい」
と云い合っている。 これを書いている間も、
五匹の中で一番風采の上がらない、
やせ・いじめられ・オドオド猫の「ガビ子」が
膝にいる。作家気分に猫はさせてくれる。

 「ワン!」おっとサンディがきて焼きもちを焼いて
怒っている。
「よしよし、お前が一番かわいいよ」と
頭をなですぐに変節。

 いいかげんなんだニャー。

1997年



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